ROBOBO’s 読書記録

読んだ本の感想です。

大塚雄介『いまさら聞けない ビットコインとブロックチェーン』_感想

 

本当にいまさらですげど

 2017年執筆の書籍なので、本当にいまさら感がありますが、仮想通貨と全く縁のない生活をしてきた私のような人にとっては、とっても分かりやすい入門書でした。同じ著者の「最新 いまさら聞けないビットコインブロックチェーン」という本もあるようなので、最新の動向を知りたい方はそちらがお勧めかもしれないですね。

 本書では、そもそもビットコインとはどういうものか、電子マネーとは何が違うのかから始まり、ブロックチェーンの技術とは、マイニングって何?、ビットコインの安全性や法整備、フィンテックの未来まで、本当に基礎から順に分かりやすく、かつ、さらっと読みやすく書かれていますので、スキマ時間にサクッと読めて知りたいことが吸収できます。

 そして、当時のビットコインをめぐる状況がどうだったのか、2022年のいまだからこそ当時を振り返ることで、フィンテックの進歩や金融業界の変遷を感じることができ、とても面白く感じました。

分散型でかつ進化するシステム

 少し本書の内容に触れてしまいますが、まずなによりすごいのは、ビットコインのシステムの作られ方だと思います。ビットコインはサトシ・ナカモトという人物が書いた1本の論文がもとになっており、そこに書かれた内容に興味を持った人たちが分担してコードを書いて作り上げたオープンシステム。それが、こうして仮想通貨として世界中に広がることになったことに、単純に感動します。なんというか、モノをつくる、仕組みをつくるということの根底が明らかに変わってしまったんだな、と思いました。

 そして、さらに感心したのは、ビットコインは金や石油と同じように有限であること。なんとなく仮想通貨は無尽蔵に作れるのではないかと考えていましたが、ちゃんと有限に設定されており4年に1回の半減期があることで、価値の維持が仕組まれているという点です。これを考えた人たち、クールすぎませんか?

 ビットコインを掘り当てることをマイニングというそうですが、ビットコイン自体はユーザー相互の認証によってブロックチェーンをつなげていくという仕組みで成り立っています。マイニングはこの作業を10分ごとに行い、ブロックチェーンの鍵を1番に発見できた人にコインが付与されるというシステム。とにかくコンピューターをハードに動かしまくる作業のようです。このあたりも、何というか、ある意味、生物的で物質的な感じが面白いと思います。

金融業界とフィンテック

 様々な仮想通貨が登場している現在、こういった金融まわりのテクノロジーフィンテックといって色々なベンチャーができています。本書の書かれた2017年当時から比べて、今は当たり前のように電子マネーを使っていますし、なんなら現金を持たなくても十分に生活できそうです。金融業界そのものも、コロナの前と後では大きく様変わりをしたように感じます。本書で2017年当時に書かれていた展望が、かなり加速して現実になっているように思います。たかだか5年前のことですが、もう5年前には戻れないな、という感じです。

 そういえば最近は銀行に行かないですね。金融という仕組み自体、またそれを中心に据えていた経済自体が、変わりつつあって、私たちユーザーは気づかないうちにどんどん未来に流されているのだろうな、と思います。そして、こうした流れ自体も、例えば今のエネルギー問題や地球温暖化、戦争や疫病によって、また違う形に変わっていくのだろうと思います。

 人が作り出した「お金」、その概念を新しい形で定義しようとする「仮想通貨」、それを生み出す分散型の「システム」、集合する「知」、進化していく「テクノロジー」。やはりなんだか生物的であるような…。読後にもやもやとそんなことを考えた週末でした。

 

2022年7月10日 読了