ROBOBO’s 読書記録

読んだ本の感想です。

ロジェ・マルタン・デュ・ガール『チボー家の人々①灰色のノート』_感想

 

触発されて手を出してみた

文学作品を読もうと思うなんて、何年ぶりでしょうか。きっかけは先日読んだ「読書会という幸福」という書籍なのですが、本の内容に影響されやすいタチなので、文学作品が読みたくなって、いてもたってもいられずに手に取ってしまいました。

 

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フランス文学が好きです

文学作品をあまり読んだことがないので、よくわからないのですが、学生のころに大学の図書館で借りて読んでいたサルトルやヴォーヴォワールが、やっぱり今も好きなので、基本的にフランス文学で描かれる人物像や考え方、男女の在り方などがフィーリングとして合っているのだと思います。

そんなわけで、初めての大作「チボー家の人々」の第1巻です。この白水ブックスの新書はとても良いですね。なんせ、1巻が分厚くないし、文字も小さくないので、これなら読めそうだと自信が湧いてきます。そして、あとからチボー家の人々が全13巻だということを知りまして、読み終えるのに何年かかるのだろうかと愕然としています。果たして最後まで読めるのか。どうでしょう?

みずみずしい少年たちの描写に引き込まれる

さて、第1巻の「灰色のノート」は、まさしく始まりの物語です。厳格なカトリック教徒の家に生まれ、地位も名誉もあるチボー家の二男ジャックと、プロテスタントの家庭で育つダニエルの友情と愛情、そして少年達の家出騒動と、それに対処する2つの家の人間模様が描かれています。

正直に言って、とても面白いです。そして、これが文学作品を読む醍醐味の一つだと思うのですが、情景描写がとても美しく、フランスのパリからマルセイユまで、少年たちの冒険のような家出騒動が映画のシーンを見るように楽しめます。

あ、本を読むってこういう感覚だったのかと思い出しました。

主人公のジャックとダニエルの淡い恋のような甘酸っぱい感じの青春の様子が素晴らしいですし、一方でダニエルの両親のテレーズとジュロームの夫婦関係の描写や、チボー家の面々と学校の神父たちの思惑など、読むだけで、当時のパリにトリップしたような気分になります。いやー文学って面白いんですね。

解説を読んで気づく味わい

文学作品、特に海外文学は翻訳者の言葉選びや表現に左右されることが多々あると思います。一つの作品でも色々な方が翻訳を出していて、まったく別の作品のように読めることもありますね。

本書は、翻訳家の山内義雄さんが14年かけて全訳した、とあとがきに書いておられ、まさに第2次世界大戦の戦前と戦後にわたって翻訳された大作です。フィクションを読んでいるはずなのに、なぜか時代や空間を越えてノンフィクションのように心に響いてくるものがあります。これも文学作品の魅力なのかもしれません。

また、店村新次さんが解説を書かれていますが、解説を読んでみて初めて気づいたことがあったりして、文学作品は、出来れば道しるべと言いますか、一緒に読んでくれる人がいたら、何倍も楽しめるのだろうなと思いました。

作者のロジェも翻訳家も解説者も皆さん亡くなっても、作品だけは、こうしてずっと読み継がれて、読んだ人に新しい感動を与えていることが、すごいことだと思います。

どこまで読めるかわかりませんが、気長に付き合ってみようかと思います。次のお話では、少年達はどうなるのでしょうか。楽しみです。

 

2022年9月5日 読了