ROBOBO’s 読書記録

読んだ本の感想です。

齋藤 孝『使える!孫氏の兵法』_感想

 

勝たなければ意味がない

有名すぎるかもしれない「孫氏の兵法」ですが、実はこれまであまり興味がなくて、いったいどういう点が優れているのか知らないまま半生を送ってきました。本書は、そういう深く理解しない読者でも、孫氏の兵法を現在の仕事に生かせるように、かなり嚙み砕いて書かれています。

孫氏の兵法とは、勝つことにとことん拘って書かれた戦術書だけあって、正々堂々と正面から戦うことは勧めておらず、いかに相手の盲点をつくか、とか、不利になったら退け、とか、自分に有利な環境を整えよ、とか、そういう実用的なアドバイスが散りばめられています。まさに、強いものが勝つんじゃない、勝ったものが強いのだ。ということですね。

勝つよりも負けないための極意

印象に残ったフレーズを少し紹介したいと思います。

『勝つべからざるは己にあるも、勝つべきは敵にあり。ゆえに善なるものは、よく勝つべからざるをなすも、敵をして勝つべからしむことを能わず』

負ける理由は自分にあるけど、勝つ理由は敵にあるので、まずは負けないようにすることが大切という意味のようです。これを仕事に置き換えると、まずは守備を固めよ、ということでしょうか。得意分野を伸ばすことも大切ですが、自分より優れている人はたくさんいるわけで、それよりも自分の不得意を少なくすることの方が負けない、つまり仕事が上手く進むようです。確かに、やたらと特定分野だけに詳しい若手社員よりも、まんべんなく事務仕事がこなせる若手の方が重宝しますね。

特に、組織で戦う(働く)うえでは、攻撃力を磨くよりも、誰もが平均的な仕事をこなせるように、守りを固める方が良いように思います。まずはそこがベースラインで、尖らせるのは次の一手という感じでしょうか。

これは子どもの教育でも大切なことだと思います。得意な科目を伸ばしてあげた方が良いように思いますが、やっぱり国語も算数も理科も社会も、ある程度のレベルまでは平均的にできた方が視野が広がるように思います。なんというか、全体を通して俯瞰的に物事を見たり考えたりする力のベースとなるのは、何でも興味をもって、何でもある程度は出来る、というゼネラルな能力だと思います。基礎基本が、やはり大事ですよね。

地続きで攻めて領土拡大

『遠き形には、勢均しければもって戦い挑みがたく、戦わばすなわち不利なり』

遠くの自分の知らない土地に攻め込むことは戦いに不利である、という意味で、とても当たり前のことではありますが、やはり自分が全く知らない分野を開拓するよりも、自分の出来ることから始めて、すこしずつ出来ることを増やしていくのが正攻法であるということです。

転職を考えるにしても、今の仕事を踏み台にして挑戦できることが良いようですね。また、他部署に異動する場合であっても、前部署での経験を生かして、少しずつ、その部署での自分の存在意義を作っていくのが良いように思います。私も今の部署で何ができるのかと、悩むことが時々あるのですが、気負わずに自分にできることを着々とやっていくようにしたいと思いました。

さて、明日からの仕事も基礎基本を大事にコツコツいきましょう。

 

2022年10月15日 読了