ROBOBO’s 読書記録

読んだ本の感想です。

村山 昇『働き方の哲学 360度の視点で仕事を考える』_感想

 

自分にとって「働く」ことの意味とは

良い本に出会えたな、というのが率直な感想です。ちょうど今、職場内の人事評価とか異動希望調書を書かなくてはいけない時期で、この本が目に留まったのも偶然の中の必然だったと思います。

本書は、一般的な仕事のスキルを紹介する書籍とは違っていて、自分にとって働くことの意味は何なのかということを考え直すことで、仕事に向かう気持ちを整理したいときに読むと、ストンと落ちるものが得られる本だと思います。タイトルの通り、哲学者の言葉が沢山でてきますし、図解説明も豊富で、働くことの意味を考え直す、自分の立ち位置を捉えなおすツールとしても役に立ちます。これまで当然のようにとらえてきた「働く」ということにまつわる色々な概念が丁寧に解説されていて好感が持てました。

「働く」ことの意味ですが、まずはやはり生活をするため、ということがあると思います。でも、これは自分の時間や能力をお金に換えている「作業」です。それだけでは「働く」ことの意味が得られません。次に大切なのは「価値を創造している」という感覚。誰かに対して、あるいは社会に対して、自分が働いた結果が何らかの形で活かされると、深い満足感を感じます。「働く」ということは、自己表現の一つだとも思います。

キャリアはどうやって作られるのか

著者は、キャリアとは、「職業生活における経験や能力・成果・役割の連なり」と定義します。また、キャリアの形成には、一心に山頂を目指す「登山型」と、山を回遊して楽しむ「トレッキング型」があるといいます。確かに、職種によって目指すべき地点が明確な仕事もあれば、繰り返しの仕事の中で組織として成長することに意義のある仕事もありますよね。どちらの型にしても、大切なことは、「山に登るということ」そのものを楽しめているかどうか、ということです。将来の目指す地点のために頑張っていても、今の仕事に面白みややりがいを感じられないと辛いだけの作業になってしまいます。日々の小さな仕事にも好奇心や面白さを感じられることが、重要な能力なのだと思いました。

また、キャリア形成には段階があるともいいます。新卒から入社して3年目くらいまでは、日々の業務の中で、知らなかったことを知り、出来なかったことが出来るようになるので、自分自身も周りの人も目に見えて成長を実感できます。でも、仕事に慣れてくると新しい学習もなく、毎日が同じことの繰り返し、自分自身でも成長を感じにくくなってしまいます。この辺りで、例えば管理部門から営業部門に異動するとか、大きな転換があると、また新しい学びができるのですが、異動のない職種の場合は、マンネリ化が避けられません。

著者は、「キャリアの節目」として、それまでの習慣が形作ってきたキャリアから、大きく飛躍する瞬間があると言います。それは後になって、あの時が節目だったんだな、と気づくようなものだと言いますが、確かに誰しもそういう経験がありますよね。それは、突然の異動がもたらしたり、自分自身の生活の変化がもたらしたり、要因は偶発的かもしれませんが、その誘因として、それまでの日々の積み重ねがあることは間違いないようです。

人生100年時代の長いマラソンを走りぬくために

働き方が多様化し、また、定年が延長されて、私たちは一つのキャリアだけで人生100年を終えることが難しくなっています。働き方の色々な選択肢がある中で、何十年と続く職業生活に持ちこたえられない人も増えていると著者は言います。メンタル不調になったり健康を害したり、仕事を続けることが、昔ほど単純ではなくなってきているように思います。そんな中で、自分なりのキャリアを積み重ねて、長い職業生活を走りきるために大切なことは、①まずは完走できるように持続可能な生活を目指していく。そして、②楽しく走る。こと。

①については、いつまでも若くないので頑張りすぎない、ということも大切だと思います。寝ても覚めても仕事のことばかり、という時間も必要ですが、ふっと自分を俯瞰する時間も大切にしたいと思います。そして、楽しむこと。仕事は辛いことの方が多いです。でも、その中でも自分なりにやりがいや楽しみを発見できる人で居続けたいと思いました。そして、マラソンであるならば、自分のゴールはどこなのか、ということをずっと考え続けていきたいと思います。それは、もはや60歳とか65歳とかいう、年齢だけではないように思います。

自分が何をしてきたか、何を考えるのか、何をするのか、それをずーっと考えて、ずーっと動いていく(変わっていく)ことが大切なのだと思いました。

明日からの仕事も楽しく動いていきましょう。

 

2023年1月8日 読了