ROBOBO’s 読書記録

読んだ本の感想です。

中原 淳『働く大人のための「学び」の教科書』_感想

 

キャリアを登って下りて、そして新たに登る時代

本書を最初に読んだのは随分と前になりますが、たまに思い出しては読み返している書籍です。何のために学ぶのか、どうやって学ぶのか、なぜ大人になっても学ぶのか、今の仕事にどうやって活かせばよいのか、そういった迷いや疑問に答えてくれる良書だと思っています。

ちょうど春の季節を迎えて、人事異動とか社内の環境の変化とか、自分自身の身の立て方とかについて思いを巡らせる時期になりましたので、久しぶりに改めて読み返してみました。

著者は、企業の人材開発やリーダシップ開発を研究されている職場学習の研究者。この書籍は、その中でも一般のビジネスパーソン向けに平易な言葉でわかりやすく書いたというだけあって、とても読みやすくまとまっていてストレスなく読了できます。

人生100年時代、長く働き続けるために、大人になっても学び続けないといけません。一度は登った山を下りて、また別の山に登る勇気が必要ですよね。

大人の学びの3つの原理原則

著者は、大人の学びに必要な原理原則を「背伸びの原理」「振り返りの原理」「つながりの原理」として3点を挙げています。

「背伸びの原理」は、成長するためには自分が確実に出来る仕事を繰り返すだけでなくて、今までやってみたことがなかったような、ちょっとだけ難しい仕事や、初めての分野に挑戦することが大切だということです。ハードルが高すぎると、何から手を付けていいのかわからなくなってしまいますので、ポイントはちょっとだけ無理をしてみること。確かに、新しいことに取り組んだり、初めての分野に踏み出したりすることは、とても勇気がいりますが、上手くいっても失敗しても、その経験は自分自身の糧になっていますよね。大切なのは、まずやってみることだと著者はいいます。

次の「振り返りの原理」は、自分の行動を事後に冷静に俯瞰することが大切だということです。喉元すぎればなんとやら、やるときは必至になって頑張ったことも、上手くいったら、それで安心してしまい、なかなか振り返ることをしませんが、成長するためには他者からのフィードバックや自分自身の振り返りによって、経験を学びに変えることが大切なようです。

「つながりの原則」は、成長には他者の支援が欠かせない、というもの。自分がまだ何もわからない新人だったころ、直属の上司や先輩にはいろいろなことを教えていただきましたが、今から振り返ると、最初の上司や先輩はとても重要な存在だったと思います。その方たちを手本としたり鏡とすることで、今の自分の基礎が養えました。

この3つの原則を大切にすれば、どんな職場でも環境でも、自分なりに学んで成長していけるように思います。

自分自身の主導権を「自分に」

本書の後半では、学ぶための具体的な7つの行動と、学びを実践して人生を切り開いた方の学びのプロセスが紹介されています。学び方の具体例や、例えば、社会人が大学院を選ぶ時の注意点やコツも書いてありますので、とても参考になります。

そして、最も大切なことは、自分自身が自分の学びを作りあげる主導権を握っているということだと著者はいいます。大人の学びは、子どものころと違って、自分の稼いだお金で自分の思うことを自分の思うように学ぶための本当の学びです。失敗もあるかもしれませんが、そこには大きな自由があります。

最近になって、自分自身のためにお金を使うことの意味がようやく分かってきました。学びも同じだと思います。美味しいものを美味しく食べれば、自分自身の血となり肉となるように、興味のあることや仕事に関連することを自分の思うままに学べば、いずれ自分自身をつくる土台の一つとなるのでしょう。学ぶことで見えてくるものがあるのなら、また違う自分になって違う働き方を選べるかもしれません。

これから、どんどん長くなる人生に必要なのは、自分自身への主導権ではないでしょうか。自分のことは自分で。自分の未来は自分で創るための「きっかけ」が学びなのかもしれないと思いました。

 

2023年3月2日 読了