ROBOBO’s 読書記録

読んだ本の感想です。

見城徹・藤田晋『憂鬱でなければ、仕事じゃない』_感想

 

仕事は憂鬱なものですか?

皆さんにとって仕事はどういうものでしょうか。この本のタイトルを見たとき、少し救われた気持ちがしました。そうです、確かに仕事は毎日が憂鬱で、1つの達成感を得るためには10の焦燥感や不安感、やるせなさを感じないといけません。

もしかしたら、今の20代くらいの方は、そんな風に仕事を感じていないのかもしれませんね。「好きなことで生きていく」という言葉は、60歳くらいからようやく現実味が帯びてくるのではないかと思います。そんな、憂鬱な仕事に向き合う人の背中を少し押してくれるような書籍だと思います。

「仕事を楽しめ」みたいな本が多い中で、このタイトルには力があります。

著者は、幻冬舎を立ち上げた見城さんと20代でIT企業の社長となった藤田さん。2人のそれぞれの立場から、働くこと、成功するためのアドバイスが書かれています。共感できるものもあれば、ちょっと自分には分からないな、というものもありますが、一言で言うなら、仕事は泥臭くて、人間関係は面倒くさくて、簡単に手に入るものなんて無いということでしょうか。

こだわりがなければ、仕事じゃない

著者の一人、見城さんは大手出版会社から独立して幻冬舎を創った方です。名もない出版社から書籍を出してもらうために、見城さんは作家に手紙を書きまくったと言います。その作家の本はすべて読んで、出演する番組もすべて見て、手紙には感想ではなく、作家がピンとくる意見を書くために、ものすごい時間を費やしたと書いています。それでも、その作家に本を書いてほしい、その作家の作品を出版して世に送り出したい、その熱いこだわりがエネルギーであったと言います。

見城さんのこだわりは、他にもいろいろと紹介されています。約束の30分前には必ず待ち合わせ場所に行くとか、初対面の相手には誰であろうと立ち上がって挨拶するとか、名刺を切らしてしまい渡せなかったら、後日に必ず郵送で送るとか、一見すると非効率で無意味なようなも思えますが、このこだわりこそが誰にもできない仕事を生み出す原動力なのだと感じました。

小さなことにこだわれるか、ここだけは譲れないという線を引けるかどうかが、一流の仕事ができるかどうかの境界なのかもしれないと思います。なんでも、なあなあで、それくらいいいじゃん、という感じで自分自身を許してしまったら、何かを生み出すということはできないのではないかと思います。芸術家にこだわりがあるように、仕事にもこだわりが必要なのだと思いました。

目指すものがなければ、仕事じゃない

何のために憂鬱になっても仕事をするのか、とても難しい問題です。一義的には生きていくため、お金を得るため、であることは間違いないのですが、もっと何か自分の中で芽生える目標のようなものが仕事の支えになっていると感じます。

見城さんは、誰もやったことがないことをすること、藤田さんは、世に名前を残すようなIT企業を創ること、どちらも目指すところがあり、それに向かって黙々と努力をすることができる方だったから今の成功があるのだろうと思います。

人から見て成功しているかどうかは別にして、自分の中で納得のいく仕事ができているかどうかはとても大切な視点だと感じます。サラリーマンであれば特に、目立たず遅れずの仕事をしていれば、それなりの稼ぎを得られて、それなりの地位にも就くことができるでしょうが、何か物足りないと感じるのではないでしょうか。目指すものが、自分の中にあるのかどうか、そのために自分は努力をしているだろうか、改めて考えてみたいと思いました。

毎日を憂鬱に過ごしていく自分のために、もっと時間と努力を割いてもいいんじゃないかと思えてくるから不思議です。

前向きな憂鬱もあるんだな、仕事も地道に頑張ろう、と思えた一冊でした。

 

2023年5月29日 読了