ROBOBO’s 読書記録

読んだ本の感想です。

千葉雅也『勉強の哲学 来たるべきバカのために』_感想

 

来たるべきバカとは何ぞや

 新年早々、衝撃的なニュースが続きます。自分にできることは何だろうな、と考えてみて、やはり相変わらずの日常を送ることなのだろうかと思いつつ、邪魔にならない気持ちを寄付という形で信頼できる機関に託すのが一番良いのだろうかと思ったりしています。

 昨年末から読み始めた本著ですが、なかなかに言葉が難しく、すんなりとは読めなかったので年を越してしまいました。著者いわく、学ぶことは自分を壊すこと、特に言葉の違和感には敏感になるべし、いつもと違う言葉を言葉の意味を意訳して理解するのではなく、語感そのものを味わってほしい。読んでいる最中は、よく理解できませんでしたが、読み終わった今は著者の言わんとしていることが分かります。例えば、漢詩を読むとき、意味はよく分かりませんが、昔は通読といってとにかく語感を感じることに重点を置いた読み方がされていました。最初はよくわからなくても読んでいるうちに言葉は自分の血肉になって頭の中に溶け込むのかもしれません。残念ながら私たちの世代は、もうそのような勉強の仕方をしていませんし、私たちの子どもの世代となると、意味のないことに時間を割くのは悪でさえあるという認識ではないかと思います。

 本著は「学ぶ」「勉強する」ということについてフランス哲学思想を通して、どういうことなのか定義しなおしている書籍です。言葉づかいは平易ですが、理解するのは少し難しい気がします。何度も同じフレーズを読み返して、分かったような分からないような、そんな感覚で最後まで進む感じです。

 タイトルの、来たるべきバカのために、とはどういう意味なのか。読み終えた後もはっきりとは分かりませんが、著者いわく勉強するということは自分を壊すということであり、いったんは馬鹿になるということのようです。あるいは、批判的なモノの見方や、斜めから見る見方を超えて、真に自分のこだわりに到達するということかもしれません。それは来たるべきバカである、ということのようです。

本当の勉強とは、本の読み方から書き方まで

 本書の構成は分かりやすくまとめられており、中身を理解できるかどうかは別として、後半部分には実践的な勉強の仕方も紹介されています。

 一つには、学ぶ時の読み方について。著者いわく、学ぶことの大半は読むことであり、学校で先生から知識を教わるのはその手助けにすぎないとのこと。何かを学ぶ時には、まずは入門書を数冊読んで、それらに書かれた語句や用語を確認するために教科書を使い、最終的には研究書や専門書にあたる、ということがお勧めされています。入門書も1冊ではなく複数を読むこと、読んで理解できない言葉は、理解できないままに言葉として受け止めること、本の著者の考えと自分の考えを混同しないようにすること、などが書かれています。有益な情報は常に自分の目で探すことが大切です。

 次に書くことについて。書けないと思っている人は、一気にたくさんの文章を書かないといけないと思うから書けないのだと著者は言います。そうではなくて、まずは考えたことを箇条書きにしてみる、間違っていても気にせず、思考があちこちに飛んでも気にせずに思いつくままに箇条書きにしてみると、それがアウトラインとなって自然に書くことに対して抵抗がなくなると言います。著者はEvernoteなどのアプリを活用して箇条書きのメモをまとめたり情報のクリップを勧めています。そして、手書きの箇条書きメモは文字の制限がかかるからこそ、自分の考えのエキスを濃縮することが出来てお勧めだと言います。要は書くことによって考えをまとめていくということが有効なようです。

仕事でも活かせる勉強の哲学

 本書は増補強の哲学が仕事でも活かせることが巻末にまとめられています。勉強の哲学から創作の哲学へ、どのようにしたら新たな自分を作り直せるのか、ということが軽いノリで書かれています。自分自身の感覚に合う仕事の仕方とは、人との付き合い方とは、というヒントが得られる内容です。

 分からない言葉を分からいままに受け止めた時のように、他人の考えや言動も、ただそのままに受け止めたらどうだろうか、そうなると、現実を超越して捉えることが可能となり、随分と生き方が楽になるような気がします。常識に縛られずに現実をありのままに受け止めてみること、それ自体がそれまで自分が正しいと思っていた大地をひっくり返して壊すことでもあり、同時に何者にもなれる自由を得ることにもなります。

 学ぶことは自分の常識を壊すこと、壊した先に次の何かを創ること。

 来たるべきバカのために、自分を壊し続ける努力が大切なんだと感じました。何言ってるのかちょっとよくわからない、という方は、ぜひ本書を読んでみていただきたいと思います。不思議と読後は納得感で溢れますから。

 

2024年1月3日 読了