生活のインセンティブを探さなきゃ!
21世紀を生きる私たちに課せられた仕事は、過去のノスタルジーに引きずられて終了しつつある「経済成長」というゲームに不毛な延命・蘇生措置を施すことではなく、私たちが到達したこの「高原」をお互いに祝祭しつつ、「新しい活動」を通じて、この世界を「安全で便利な(だけの)社会」から「真に豊かで生きるに値する社会」へと変成させていくことにあります。
カバー袖より引用
経済成長はもうしないの?
コロナ禍で、世界中の経済が確実に何か大きな変化にぶち当たった2年間。
今年も、その3年目として、なんとなく変化が続くように思っていたところで、本書を読んで、「あ、やっぱりそうなんだ」と素直に納得しました。
これまでの右肩上がりはもうなくて、成長を前提にした社会システムは既に維持できていない。その通りだと思います。
じゃあ、何が今、人間を動かそうとしているんだろう?
著者は本書で、文明的価値から文化的価値へ。と書いています。
もう衣食住は足りていて人間が欲するところは、そこじゃあないんだよ。と。
なるほどですね。
仕事が遊び?
来るべき未来のために、毎日、通勤して、一日の大半を仕事と雑事に費やして、家に帰っても、なんだかんだと忙しい…。
でも、そう。老後には2000万は必要だと言うし、子供たちはますますお金がかかるし。
全ては未来のために今があるはず…。
という働き方は、もう現状に合ってない。と著者は書きます。
面倒くさい仕事から順にコンピューターに置き換わり、最後に残るのは創造的な活動になって、仕事は、今の概念でいう仕事ではなく、遊びになる。と。
わあお、なんて素晴らしいんでしょう。
でも、誰でもが個性を生かして創造活動ができるとは思えないし、できる子。と、できない子。が明らかに分かれてしまいます。
ちょうど、絵画の値段がうん十億円から数千円まで幅があるように。
私は…とても生き残れる気がしませんね。そのあたり、どうなんでしょう?
ベーシックインカム?
そこで著者は、誰もが生きていくために必要なお金を享受できる「ベーシックインカム」の導入を提案しています。
つまり、いわゆる、これまでの、たくさん作ってたくさん売ろうよ。という経済活動ではなく、みんなから集めて、同じだけみんなに配分しようよ。そして、本当にお応援したい人やモノにお金を払おうよ。という理論です。
えーっと、そのもとになる財源は、税金とか寄付とかですね。
お金持ちになることに価値はなくて、今をいかに創造的に生きるか、に価値がシフトするという思想ですね。
うんうん。よくわかります。
ちょうど次男が、隣で、宿題の書初めをしていまして、
「なんで習字というものがあるのだ?誰も普段は筆で書かないのに。タブレットで勉強したら鉛筆すら使わないのに?なぜなんだ?」
とぼやいていたので、そういうことなんだよ。と納得した感じです。
「まあ、あれだよ。習字は既に文字を書く・伝えるという目的ではないのだよ。そこにあるのは、黒と白の世界。つまり、次男くんの創造性だよ。」
次男は、納得してませんでしたけどねー。そういうことです。
豊かな高原に立てるかな?
最後まで読み終えて、とても示唆に富んだ内容だったと思いました。
新年の一冊目として、読んで良かったな、と思いました。
でも一抹の不安というか、私自身が旧スタイルの社会で長く生きてきたからか、ちょっと想像が及ばない部分がありました。
働くことは生活の一部で、生産することが当たり前だとは思うのですが、資本主義を抜け出して、同じ気持ちで働ける(創造できる)だろうか…と。
生活のインセンティブはどこに。
そこを探すところから個人の責任になるという意味においては、「豊かな高原」はなかなか厳しい場所だな、と思いました。
はたして、この先、子ども達の世代は、高原にどんなふうに立つのでしょうか。
2022年1月2日 読了