ROBOBO’s 読書記録

読んだ本の感想です。

ティエン・ツォ著『サブスクリプション「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル』_感想

 

モノが売れず、すべてがサービスとして提供される時代には、顧客との長期的なリレーションシップが成長の鍵となる。

新しいビジネスモデルとは

サブスクと聞くと、単純に定額課金ビジネスのことだと思われる方が多いと思いますが、本書は良い意味でもっと深い概念を説いた書籍です。

これまでのビジネスがモノを作って誰だかわからない顧客に広く販売することだったとすると、サブスクリプションは顧客を中心に据えた全方向サービスの提供を目指すモデルであり、顧客が成長すればするほど、供給するサービスの質も上がり、ビジネスも発展する。ということが書かれています。

考えてみると、私たちのデジタルライフは実に多くのサブスクに頼っていて、アップルのストレージはいつの間にか大容量プランで課金しているし、アマゾンプライムは便利すぎて解約するなんて考えられないし、とにかく少なくともデジタルの面においては、これまでのようにモノを購入して所有する必要性を感じないようになっています。

あらゆる業界が、モノを売るのではなくてサービスを提供するという見方に立てばサブスクへとモデルシフトできると著者は説いています。そして、モノを所有しない時代の唯一の消費がサービスであるということです。

永遠のベータ版

著者は、Gメールが世に送り出されたとき、もうほとんど機能としては完成していたにも関わらず、ずっとベータ版という表記が残されていたことを引き合いに出して、完成した商品を売るのではなく、顧客のニーズに合わせてサービス内容を変えていくことの重要性を繰り返し書いています。顧客起点で商品を変えていくことにより、顧客が上向きの時も下向きの時も、常に最適のサービスを提供することで、顧客との関係を続けていくことができるとと説いています。そして、そうした顧客中心のサービスは、現在のようなIoTが実現したからこそ可能になったというわけです。サービスを使えば使うほど、私たちの行動履歴はデータとしてサービス提供企業に蓄積されていくことになります。つまり、どんなビジネスも小さく始めてデータを集めていけば、まるで人工知能が学習をするように少しづつ成長していけるというモデルなのです。

これは、なかなか斬新な考え方だと思いました。永遠に完成しないことこそが完成形なのですね。

どんな分野にも適用できるのか

読み進めるうちに気になってくるのは、例えば行政や教育など単純にサービスを提供するだけではない分野にも、このモデルが使えるのだろうか、という点でした。

サービスと対価の流れが明確であれば、サービスの使い手の成長によってサービスの供給側も大きくなる、という理論は理にかなっていると思いますが、果たして、行政サービスと住民のような収益性のない関係においてもこのモデルは有効でしょうか?

この辺りは、これからじっくりと考えてみたいと思います。普段はあまり考えたことのなかったビジネスモデルというものを、もう少し見聞を広めて学んでみようかと思いました。

 

2022年2月8日 読了