chatGPTの登場によるゲームチェンジ
ちょうど生成AIのことを社内報に書こうかと思っていたところだったので、ナイスタイミングに手にとることができた本書。昨年度あたりからジワジワと使っている便利ツールのchatGPT、最近では働く大人の強い味方として手放せない存在になってきました。
本書は、chatGPTの活用について、こういう使い方がいいよ、と提案してくれるのはもちろんですが、その活用によって仕事で必要とされるスキルがどのように変化しつつあるのか、仕事に対するモチベーションがどのように変わるのかに重点を置いて書かれています。すでにchatGPTの使い方や効果的なプロンプトの入れ方などについてはハウツー本がたくさん出ていますし、なんならchataGPTに聞けば早いのでその部分は充足していますが、生成AIを使うことによって、自分自身にどのような成長が期待できるのか、という点が書かれた本はあまりなかったのではないでしょうか。生成AIを使うことの後ろめたさみたいなものも払拭してくれます。
まずは壁打ち相手として使ってみよう
よく言われるchatGPTの使い方は、自分の思考を整理するための「壁打ち相手」にするというもの。本書でも、まずはザックリとした問いかけをしてみて、得られた回答の中から筋が合ってるものを掘り下げて深めていくという使い方が紹介されています。自分の頭の中でモヤモヤと考えていたこともchatGPTにアウトプットしてもらうと、なるほど、こういうことだったのか、と整理されて視界がスッキリとクリアになります。自分一人で思考を書き出していくよりも、より深く幅広い考えが補足できる点が魅力ですね。しかも奇跡的な短時間で整理されるという。
また生成AIを活用すれば、世界中の頭の良い人が考えた思考や、素晴らしいセンス、様々な経験を、まるっとコピーすることができると著者は提案します。これまで、センスや経験というものは、ある程度の時間を経ないと身につかないものでしたが、chatGPTをつかえば著名人の考え方をそのままなぞることも可能です。例えば、「この問題、孫正義ならどうやって対処する?」みたいな問いかけを行えば、chatGPTはネット上の孫氏のデータをかき集めて、孫氏の思考回路を真似て回答を返してくれます。もちろん、それは生成AIが生み出した、あくまでもそれっぽい回答にしかなりませんが、それでも、世界の成功者が考えるとこういう答えになるのかな、という足がかりを得ることができます。じゃあ、イーロンマスクならどうなるのかな?と複数の視点から比較したり共通項を探すことも可能です。そして、それらは全てAIと自分だけのひっそりとした会話で出来てしまうという手軽さもすごいですよね。
PDCAからDCPAへの転換
これまでの常識では、まずリサーチをしてプランを立てて、それを実行して、検証して、改善していくというサイクルでしたが、これからは、まずは不完全な状態でも実行してみて、検証を得て、それから計画を立てて改善していくという流れが主流になるようです。自社だけで100%のものを開発しようとせず、あえて未完成の状態で市場に出してユーザーと一緒にレベルを上げていくという「共創」のプロセスはソフトウェア業界では当たり前になりつつあるかもしれませんが、chatGPTの活用により、これからは他の分野でもそういった仕事の回し方ができそうです。生成AIを使って机上のプランづくりに時間をかけることなく、とりあえず実行してみてユーザーの反応を見て、改善していくという、走りながら軌道修正するというプロセスの方が、じっくりとデータを集めて仮説を立てて計画を作って、ようやく実行、というプロセスよりもスピード感があるのは間違いありません。そして、何度も試してみて経験を得た方が成功に近づくのも事実です。
著者は、ガチャでSSRをひくための唯一の方法は何度もガチャを回すこと、だと言います。この回す行為が簡単に素早くできるのであれば、回した回数が多い方が成功の確率が上がるというわけです。そして生成AIはその負担を肩代わりしてくれるツールになるということですね。失敗のリスクが下がり挑戦しやすくなることによって、理屈よりも直感で「ちょっとやってみようかな」と始めることが可能になり、自分オリジナルの発想も形にすることができます。これから求められるスキルはIQの高さではなく、何が好きか、何に価値を置いているのか、という「自分は〇〇」というオリジナルな意思かもしれないですね。
2025年1月18日 読了
