ROBOBO’s 読書記録

読んだ本の感想です。

山竹伸二『ひとはなぜ「認められたいのか」ー承認不安を生きる知恵』_感想

 

自由という不自由

自由に生きられるはずなのにかえって自由に行動できない現代社会。何者になってもいいという「自由」が与えられれば与えられるほど「何者にもなれない」ことに悩む人が増えているように思います。

本書の語り口は、丁寧で分かりやすく、読み進めていくうちに、著者と一緒に「人はなぜ認められたいと思うのか」ということをじっくりと考察していくような気分になります。

子どものころに親や教師などの親しい大人から、「何者でなくてもあなたは大切な人」と認めてもらった経験が「自分はこれでいいんだ。これが自分なんだ。」という自己了解を得る力になると書かれており、これは本当に大切なことだな、と思いました。

封建的な社会や宗教が強く影響する社会では、世間一般の「こうあるべき」という姿が明確ですが、現代の何をしても自由な社会では価値観が多様化しているため、何をすれば認められるのかはとても微妙な問題です。そのため、認められたいけど自由に生きたいという葛藤が生じてしまい、生きることに大きな不安を抱えている人が増えているということです。精神疾患は遺伝的な要素もありますが、不安から自分を守るための自己防衛の形が症状として出ているのだと理解すると、とても分かりやすく納得するものがありました。

相互に認め合う社会に

では、どうすれば不安が少なくなるのか。著者は看護師や介護士、教師や保育士などの、人の気持ちに共感する職業がますます重要になること、また、専門的な人たちだけではなくて、誰もがお互いに認め合うスキルを身に着けることが大切だと述べています。

とにかく、話を聞いてもらうだけで、心が軽くなる経験があると思います。見えないことは怖いし、知らないことは不安なので、よく見て、知り、学ぶ努力も必要だと思います。

認められたい自分がいて、認められたい他人がいることを理解しているだけで、随分と世の中は違ってくるように思いました。

まずは、身近な家族のあるがままの姿を愛でることから始めてみようかと思います。

 

2022年3月21日 読了