ROBOBO’s 読書記録

読んだ本の感想です。

水野 学『センスは知識からはじまる』_感想

 

センスとは何だろう

 センスがいいとか悪いとか言いますが、実のところセンスとは何だろうな、と思い手に取ってみた書籍です。内容は単純明快、移動時間にサクサク読めて、なるほどな、と納得する点がたくさんありました。明日からの仕事にもすぐに活かせそうなので、何かクリエイティブな力を求めている方にもお勧めです。

 さて、本書の中で著者が繰り返し述べていることは、「センス」とは、「ひらめき」や「思いつき」や「好き嫌い」ではなく、「知識の積み重ねの中から物事を最適化するスキル」だということです。言われてみると、その通りで、私たちが何を選ぶのか、どういう判断をするのかという行動は、すべてこれまでの経験=知識に基づいて行われています。今日、センスのいい服を選べるのか、ダサい格好になってしまうのか、その一瞬の判断は、私たちがこれまで見てきたモノの中から、色んなシチュエーションを想定して、今日は何が最適なのかを選ぶ力が発揮されていることになります。

 つまり、センスとは、知識の積み重ねの中から最適なものを選ぶ力だといえます。

普通を知ることが大切

 したがって、センスを磨くためには、まずは自分の中に知識を蓄えることが大切だと著者は言います。そして、何が良くて何が残念なのか、その判断基準を持つためには、まずは「普通」とか「王道」と呼ばれるものが、なぜそうなのかを理解して、自分の中に判断の物差しを作っておくことが重要なようです。

 そして、普通よりちょっと尖ったもの、あるいは普通よりちょっと緩いものをその時々の時代の流れに即して選んでいくという作業がヒット商品を生む秘訣のようです。もともとグラフィックデザイナーとしての仕事をメインにされていた著者は、何かをデザインするときには、なぜその字体を選んだのか、なぜその色彩なのか、なぜその形なのか、すべて説明できないと意味がないと言います。沢山ある字体のなかで、どうしてその文字じゃないとダメなのか、それは何となく選んだように見えて実はその背景に商品のコンセプトや生産者の思いが反映されているはずなのです。まさに私たちの選択には意味があり、それはたくさんの情報から練りだされたものであるからでしょう。こうしてヒット商品は思いつきではなく、緻密な調査と予測から生まれるのです。

神は細部に宿るので

 後半では、センスの磨き方として具体的にどうやって知識を集めるのかなど、すぐに実践できるアドバイスが多数書かれています。そして、著者も繰り返し述べていますが、センスは生まれつきのモノではなく研鑽によって習得できるモノなので、大人になっても子どものように新しいことを体験したり、いつもは話さない人と話したり、そうした新鮮な経験が大切だということです。

 そして、細部への拘りも大切だとも言っています。ほんの少し線が太いとか、ほんの少し行間が広いとか、全体から見ると、何でもないことのようですが、それを直さないとなんだか全体がスッキリしない…デザインをされている方ではなくても、そういう感覚を持たれたことがあると思います。その、ほんの少しに拘れるかどうかが、仕上がりに大きく影響するという経験は私自身もよくありますので、大変共感できる部分です。デザインに限らず、どんなことでも、細部をおろそかにしない、というスタンスは大切だと思います。文章の言葉を選ぶ時も、お客様への声掛け一つをとっても、はたまた部下への指示にしても、何事も細部を詰めておくことが、後々の成果に跳ね返ってきますよね。

 仕事であれば、その職業のプロとして、プライベートであっても、自分自身のプロとして、これまでの経験=知識の中から最適なものを選んで、細部も譲らない、という心意気がセンスを磨く第一歩なのではないかと思いました。

 

2023年10月21日 読了