ROBOBO’s 読書記録

読んだ本の感想です。

江上剛『会社人生、五十路の壁 サラリーマンの分岐点』_感想

 

いつまでこの仕事を続けます?

ごく普通のサラリーマンとして、会社に就職するのが20代前半。それから昇進したり役職についたりして、50代を迎えるころには、これまで生きてきた人生の半分を会社の中で過ごしてきたことに気づいて、「あれ?これで良かった?」と愕然としてしまう。中高年になると誰もがそんな気持ちになりますよね。

本書は、なんとなくこれまでの生き方を振り返ってみたいと思って手に取った一冊です。著者は、元大手銀行員。50代を前に脱サラして作家に転身された方です。そのあと、銀行の不祥事の後始末を任されて、一時は裁判になったりと色々苦労をされてきました。そんな著者が銀行員時代を振り返って、「いつまでこの仕事を続けるのか、他にやるべきことはないのか」という問いにヒントを出しています。

誰もがある年齢になると、未来を想像するよりも過去を振り返ることの方が多くなると思います。未確定の未来よりも、自分の足跡がついた地面の方が断然長く見えてきます。でも、これからは人生100年時代。60歳で定年退職して年金を満額いただける時代ではなくなりました。今が50代だとしたら、あと残り半分も自分の力で生きていかなくてはならないという、とても残酷な時代になりました。

辞めなくてもいいのなら仕事は辞めてはいけない

著者は40代後半という働き盛りで大手銀行を退職して、ずっとなりたかった作家に転身されました。もちろん、作家の才能があり、コンスタントに作品を書ける力があったからできたことだと思いますが、当時を振り返えっての著者の言葉は、「仕事は辞めない方がいい」というもの。著者が退職したきっかけは、ある経営陣の会議で取締役達の発言に単純に腹がたったから。ちょっとしたきっかけで会社への信頼が崩れてしまったのだと。

それでも、会社への信頼が薄れて、色々と理不尽なことがあったとしても、やはり組織を離れるのは慎重にするべきだと著者は言います。組織なしの自分を振り返ってみると、自分に残るものはほとんどなかった、名刺の山もほとんどは紙くずであったと。

確かにそうかもしれませんね。会社の中では人が仕事をするのではなく、その人の役職が仕事をしていることがママあります。逆に、組織で働くとは、そういうことだと思いますし、それを理解していないと、上手く立ち回れないことが沢山あると思います。でも、素の自分に戻ったとき、自分が身に着けたスキルはというと…ほぼ何も無いですね。

これは、中高年にはかなり衝撃的な事実です。20代前半から生活時間のほとんどを費やしてきたはずなのに、会社の外に出たらなんの役にも立たないわけですから。

後半を楽しむために何を大切にするべきか

では、どうしたらいいのでしょう。このまま仕事を続けて、もっと出世できる見込みのある方もおられるでしょうが、多くの人がそこそこの役職、そこそこの年収、そこそこの業績で60歳を迎えて、その後は役職を降りて、年金が出る歳になるまで会社に雇ってもらうという生き方が待っているわけです。会社に居場所があることは、とても幸運なことですが、少し空しくも感じます。自分のやってきたことの証をどうやって確認したらよいのでしょう。

著者はヒントとして、何歳になっても自分の好奇心の向くままに色々やってみること、家族のなかに居場所をつくること、そして、とくに大切なのが、仕事を通して得られた人間関係を大事にすること、と書いています。名刺の整理をしたときに、本当に自分の話を真摯に聞いてくれそうな人、自分と一緒に何かをやってくれそうな人がどれだけいるだろうか、と。実際には手元に残る名刺は数枚かもしれないけれど、それこそが自分が仕事のなかで築いてきた財産そのものであると。それは社外の人かもしれないし、取引先の方かもしれないし、社内の部下や上司かもしれないけれど、そうやって築いてきた人脈を、人生の後半を生きる武器として使っていくことが重要なのだと思いました。

これから先に自分と一緒にアホなことを(失敗しそうなことを)やってくれそうな人、自分が迷ったときに話を聞いてくれそうな人…たくさんではないけれど何人かが頭に浮かぶと思います。その人たちはこれまでの苦労を共にした人かもしれませんし、自分が感銘をうけた師かもしれません。そして、これからも日々の仕事を通して、あるいはプライベートの活動を通して、また新しい人達とどんどん出会っていくはずです。

やはり人との縁を大切にしていくことが自分の財産になるのだと思いました。明日からはそういう視点で日々の仕事に取り組んでみたいですね。

 

2022年12月23日 読了