ROBOBO’s 読書記録

読んだ本の感想です。

和田秀樹『思秋期の生き方 45歳を過ぎたら「がまん」しないほうがいい」_感想

 

誰もが迎える中高年をどう生きるか

 気が付くと風邪がなかなか治らなくなっていたり、ついつい階段じゃなくてエスカレーターを選んでいたり、休日に色々やろうと思っていたのに何もせずにゴロゴロ過ごしてしまったり。とにかく歳を重ねてくると残念なことが増えてきますよね。

 仕事も以前ほど情熱を持って取り組めないし、子ども達は十分に大きくなってそれぞれの時間を過ごしているし、なんとなく自分と向き合う時間が増えたような、でも何もする気が湧かないような、そんな40代から50代の時期を著者は「思秋期」といいます。思春期に対応する、第2の人生の転換点だから「思秋期」だと。

 本書は、誰もが迎える更年期の不具合を身体の面と心の面から分析し、それに対応するためのちょっとしたアドバイスが書かれています。著者は精神科医であり、教育アドバイザーであり、40代になってから映画監督にも挑戦した方です。医学的な知識と著者の経験に基づく中高年の過ごし方は、これから40代を迎える方にとっても、まだまだ若い20代の方にとっても、すでに中高年の真っただ中の方にとっても、分かりやすく有用なアドバイスがたくさん書かれていますので、サクッと読めて気持ちが前向きになれる良書かと思います。

身体の老化よりも気持ちの老化に注意

 まず、老化と聞いてすぐに思いつくのは、目がかすむようになったとか、ちょっと走ったら息切れしてしまうとか、そういう体の衰えをイメージしがちですが、実は、脳の老化に一番注意が必要なようです。

 脳の前頭葉の機能が衰えてくると、感情のコントロールが上手くできなくなり、ちょっとしたことで怒ってしまったり、人の話が聞けなくなったり、新しいことに取り組めなくなったりします。実はこの気持ちが上がらなかったり、他人にイライラしてしまったり、という心の動きが老化の始まりなんだとか。気持ちが老化してしまうと、変化を受け入れられなくなるので、いつもと同じことの繰り返ししかできなくなってしまいます。やりなれた仕事は上手くできるけれど、商品開発とか販路開拓とか、クリエイティブな仕事は脳が受け付けなくなってしまいます。変化を好まず、現状維持がいい、と思うようになったら要注意です。

 そして、脳の老化がはじまると、次々に他の場所の老化も始まっていく、なんとも恐ろしいことですが、40代から50代はこの老化のスタート地点にあるようです。脳を老化させないためにも、中高年から「新しいこと」にチャレンジすることが大切だと著者は言います。初めてのことに挑戦してみるとか、いつもと違うコミュニティに属してみるとか、大学で学びなおすとか、何でもいいので、自分の興味関心のあることにどんどんチャレンジしてみるのが良いようです。脳への刺激が老化を防止してくれますし、今の仕事をリタイアした後の居場所も同時に作れるので一石二鳥ですね。

ホルモンを出して老化防止を

 体の老化防止では、女性ホルモンと男性ホルモンの分泌を促すことが重要です。歳をとると自然とホルモンの分泌量が減少し、更年期障害のような不調をもたらしてしまいますので、意識的にホルモンを作る食事や活動をする方が良いようです。食事では意外ですが、ホルモンの元になるのはコレステロールですので、中高年からのダイエットや無理な運動は老化を進めてしまう逆効果になるようです。食べ過ぎにならない程度に、食べたいものを美味しく食べる、すると幸せホルモンが分泌されるし、カロリーもコレステロールも取れて、若々しくいられるのだそう。また、恋愛やセックスもホルモンの分泌に重要な要素なのだそうです。枯れてしまってはいけないということですね。

 中高年になったら、身体のためにも心のためにも脳のためにも、無理な節制は行わず、自分の気持ちの向くままに食べたり活動したりするのが良いようです。タイトルにもありますが「がまん」は若いころはある程度必要ですが、40歳を過ぎたら、まずは自分ファーストで、自分がどうしたいのか、どう考えるのか、を元に行動することが大切なのです。そして、もう十分に自分の行動に責任を持てる歳でもありますしね。

 最後に著者は「思秋期」と名付けた理由を、「たくさん思ってほしいから」と述べています。思春期は将来が不安で、人間関係も上手くいかなくて、たくさん思い悩む時期でしたが、そこを過ぎると私たちは「大人」になってしまって、日々の生活を思い悩むという機会がなくなりました。そんななかでの老化の始まりとなる中高年は、「大人」から次のステップに進む時期として、再び思い悩む時期であるというわけです。

 ボーっと生きてきたわけではありませんが、なるほど、惰性で生きてきてしまった感じもありますので、少し思い悩んで老化と向き合ってみようかな、と思いました。

 

2023年9月17日 読了