ROBOBO’s 読書記録

読んだ本の感想です。

坪田一男『GO OUT 飛び出す人だけが成功する時代』_感想

 

飛び出す人がキャリアを築く

 表紙にもあるように、著者は慶応大医学部の教授で日米の医師免許を持つ眼科医&アンチエイジングの専門医であり、スタートアップ上場企業の社長でもあり、ハーバード大に留学したり、60歳を過ぎてからMBAを取得したりされている方です。誰もが羨むようなキャリアの持ち主ですが、そんな著者の成長するためのメソッドが込められた一冊になっています。

 著者の主張はいたってシンプル。広い世界にGO OUT(飛び出せ!)しなさい、というもの。これまでの著者の経験をもとに、自分の枠から飛び出すことの必要性とメリットが書かれています。読むほどに納得する内容で、読後はなんだか自分も飛び出せそうな気がしてきて勇気が湧いてきました。

 さて、GO OUTとは、今の安定した状態に留まらずにどんどん新しいことを始めてみよう、と提案するものです。平均寿命が延び、人生100年時代と言われる時代になり、若いころに学んだスキルだけで60代~100歳までを生きることは、もうすでに難しくなっています。60代以降は、生活のために働くのではなく、自分自身をアップデートするために学んだり働いたりして過ごさなくてはならない、そんな思いから、「やりたいことがあるなら、失敗を恐れずに挑戦するべき」と著者はいいます。そうやって自分の殻を割り続けた人だけが人生のキャリアを積むことができるのです。

T型人材を目指そう

 でも、日本の社会では人と違うことをすることは、まだまだハードルが高いようです。著者は眼科の勤務医として働きだしてから5年後の30歳で海外の大学への留学を希望しますが、医局の先輩からは、留学は10年以上キャリアを積んでから行くものだと諭されます。でも著者は、そんな慣習よりも自分の人生を大切にしたい、自分の思うタイミングで行きたいと希望し、ハーバード大への留学を実現させました。本書には詳しくは書かれていませんが、周りの医師の反発は大きかったのだろうと思います。日本で、人と違うことを選択するには大きな勇気が必要です。そして、社会人として働くうちに、長いものに巻かれて、自分のコンフォートゾーンから抜けられなくなり、新しいことへの挑戦を諦めてしまう人が多いのだと言います。

 そんな、著者がおすすめするスキルアップが、T型人材を目指すというもの。会社の中では様々な部署を転々としますが、いずれも同じ会社の中の経理であったり営業であったり企画であったりと、会社の中で通用するスキルでしかありません。それでも、経験を通してそれらのスキルを身に着けることは会社の中での自分の有用性を高め価値を高めることになります。これを著者は「深化」と呼んで、どんな人も、まずは深化を身に付けなければ始まらないと説きます。著者が様々なキャリアを得ることができたのも、医師という自分のベースとなるスキルがあったからだと言います。

 そのうえで、挑戦したいのが自分の普段の枠を超える「探索」というものです。自分の仕事とは少し離れたところで新しいことに挑戦してみる、新しい出会いを求めてみる、そうすることにより、これまでは縦方向の伸びしかなかったⅠ型人材だった人が、横方向に別のスキルを持つT型人材になり、世界が広がるというのです。そして、残念ながら日本の会社には小さなT型人材がたくさんいるとのことで、著者がお勧めするのはもっと大きなグローバルなT型人材を目指すというものです。

基本的な努力で深めて広げる

 本書の後半では、著者が年間200冊の本を読むことで初対面の人とでも会話できる知識を蓄積できていることや、世界で自分の意思を伝えるなら英語を読めることや話せることは必要最低限のスキルであることが書かれていて、やはりキャリアアップには地道な努力が大切なのだということが分かります。

 そして何よりも、世界を目指すわけではなくても、今日の自分が昨日の自分よりも少し進んでいること、明日の自分は更に進んでいるであろうことを確信できる、その気持ちが重要なのだと思いました。人生も半ばを過ぎると、守るものが増えてしまって、なかなか外の世界には飛び出せなくなってしまいがちですが、いくつになっても新しいことを学ぶことは大切なのだと思います。

「すべてのものは学ぶことができ、すべてのものは教えることができる」

人生100年時代の今なら始めるのに遅すぎることはないようです。読後は勇気が湧いてくる、そんな一冊でした。

 

2023年12月22日 読了