ROBOBO’s 読書記録

読んだ本の感想です。

廣中直行・遠藤智樹『「ヤミツキ」の力』_感想

 

ハマる幸せ!

「やみつき」とは、もともと病んで床につく重症の病気状態を表す言葉だそうですが、現代で「ヤミツキ」と言えば、何かに夢中になって毎日繰り返してしまうようなハマる状態のことを言いますね。

本書は、そのヤミツキをポジティブに捉えて、生きる原動力や成長を促す重要なファクターとして心理学や社会学的な見地から分析しています。まあ、とにかく読みやすくて面白いので、難しい理論は無しに素直に理解できる内容です。

「ヤミツキ」=何かに夢中になることは単純に幸せですよね。周りのことを気にせずに自分だけの世界で好きなものに没頭する贅沢、誰もが求めている至高の時間の使い方ではないでしょうか。本書では、ヤミツキを「感覚の快」「運動の快」「認識の快」と分類して、なぜ気持ちがいいと感じるのか、快がもたらす達成感やモチベーション、浸る状態のフローなどについて実例も交えながら解説しています。

ヤミツキで自己肯定感UP

例えば仕事で嫌なことがあっても(嫌なことは頻繁に起こるものですが)、一日のスケジュールを終えて帰宅して、一息ついた後の自分時間に好きなことをすると、エネルギーが回復するのを感じます。その時間になって、やっと自分自身を取り戻せたように感じます。自分の好きなことを誰にも否定されず、自分のペースで黙々と取り組むこと、まさにこれがヤミツキの本質なように思います。

本書では、好きなことに集中して取り組むことで得られる根気、失敗しても乗りこえる力、遊びの気持ちなどが絶大なパワーを与えてくれていると書いています。確かに、なぜそれにハマるのかはよくわかりませんが、ハマったことに対しては面倒くさいとかやる気が出ないとかいうことは全くなくて、大変なことでも率先して行動してしまうような、訳のわからないパワーが内在していますね。

なんとなくですが、私たちは何かに夢中になっている自分が好きなのではないでしょうか。周りが見えないほど集中する自分、時間を忘れるくらいの楽しさ、こうしたハイの状態が脳内にドーパミンを分泌させ、「快」をもたらすとともに、自分というものの本質を分からせてくれるような気がします。

人と共有する「ヤミツキ」

そして、自分の好きなものを同じように好きな人とつながりたい、という欲求もとても大きなものだと感じます。本書では、宗教的な祝祭とトランス状態、各地に伝わる芸能文化に触れ、一つのことに大勢の人間が集中してつながることの意義を書いています。

まさに、現在はSNSなどでそうした負のエネルギーが簡単に放出されているように思いますが、「ヤミツキ」は一つの社会性をもたらす原動力にもなっているのだと感じます。好きなもので世界とつながりたい。この欲求は皆さん持っているのではないでしょうか。その世界が友人や家族かもしれませんし、はたまたスマホの画面の中かもしれませんが、いずれにしても社会を動かす大きなムーブメントになる可能性があります。

まさに「ヤミツキ」の力、というか、「ヤミツキ」になりたい人間の欲望みたいなものを感じて、なるほど、と納得してしまいました。

皆さんも、好きなこと、繰り返し毎日やってしまうことがありますよね。それは非常に個人的なことですが、あながち社会と無関係でもないのです。個々の原動力があってこその社会ですよね。今日も思う存分、好きなことに浸って、生きるパワーをチャージしたいと思います!

 

2022年6月25日 読了