ROBOBO’s 読書記録

読んだ本の感想です。

ダン・アリエリー『予想どおりに不合理』_感想

 

とにかく面白い行動経済学

真剣に考えて、もっとも自分の希望に合ったものを選んでいるはずなのに…結果を見ると、なぜか不合理な選択をしている…? 当時は、この本で行動経済学という言葉を初めて知って、先日読んだ別の本でも引用されていたので、久しぶりに読み直してみたのですが、とにかく面白いですね。なんで人間はこんなに周りに影響されるのだろう?と自分の行動も含めて、半ば呆れながら楽しく読むことができました。

たくさんのユニークな実験では、著者の大学の学生や同僚が登場します。巻末には参考文献と合わせて、著者の同僚の紹介がされてますので、そちらもなんだか面白いです。訳本のため少し読みづらいところもありますが、全体的に、著者が研究を楽しんでる姿が思い浮かぶようで、示唆とウィットに富んだ内容が楽しめます。

知識が先か、経験が先か

色々と実生活の参考になることが書かれてます。その中でもさっそく仕事や日常に活かしてみたいと思ったのは、第10章「予測の効果、なぜ心は予測した通りのものを手に入れるのか」の内容。ここでは、先入観がいかにその後の行動や感覚に影響を及ぼすのか、ということが書かれています。

例として食事や音楽の実験がでてきます。例えば、椅子のカバーが破れているような、ちょっと薄汚れた感じのドライブインで食べる高級フランス料理と、大理石の床にピカピカに磨かれたグラスにパリッとしたウエイターが運んでくる店で食べるフランス料理と、もしも味や料金が同じだったとして、私たちが美味しいと感じて、自分の行動に満足感を覚えるのはどちらでしょうか。

音楽でも同じだと著者は言います。一流の演奏家が駅のホームで投げ銭演奏をしていても、それに気づく人はほとんどいなかったと。逆に立派なコンサートホールで二流の演奏家が演奏したとしても、その違いに気づく人もいないだろう、と。

つまり、私たちの感覚は、何かを経験する前の「知識」や「環境」に大きく影響されるようです。さらに言うと、自分が払った「お金」にも影響されるようですね。高いお肉の方が安いお肉よりもおいしく感じるわけです。そんなわけで、純粋な感覚を得たいのであれば「知識」よりも「体験」が先にこないといけないわけですが、よりよい「感覚」を得るためには、先によりよい「知識」をインプットしておくと、その価値が何倍にも増幅される利点もあるというわけです。

不合理な選択を利用するマーケティング

こうした、不合理な選択の特徴を上手く活用すれば、例えば、お客様に本来の価値以上の価値を体験していただくことも可能となります。体験よりも先によりよい知識や環境を提供することで、体験自体の価値を高めていくという手法は、実は色々なところで活用されています。高級旅館が高級旅館たるのも、その価値づくりがあるからでしょう。

こうした発想は、様々な場面で活用可能だと思います。ビジネスだけではなく、例えば公共政策や教育、自治会とか地域のコミュニティ活動でも、はたまた組織の中でも、人間の不合理な選択に着目すれば、もっと人を動かす仕掛けを作れるのではないかと感じました。そんなの、マーケティングの基本だよーと言われると、その通りなんですけどね。

そんなわけで、どのように活かせるのかは未知数ですが、ちょっと物事の見方を変えて、これまで考えてこなかった「人をどう動かすのか」「どう満足を作るのか」という発想で日々のプロジェクトも見直してみたいと思いました。

行動経済学は、本当に面白いですね。忘れた頃にまた読み返そうと思います。

 

2023年2月23日 読了